このページにたどり着いた方は労災申請しようと思っている人でしょう。なおかつ、会社側が協力してくれないから「自分でする」という決意を持っている人だろうと想像します。
労災申請書は、会社の協力がなくても自分で書いて提出することが可能です。もともと労災申請は労働者の権利であり労働者自らがやることですから、労災申請は会社の協力がなくてもできるようになっています。さらに労災にあたるかあたらないかの判断は労働基準監督署がやることですから、労災にあたらないという判断を会社がやること自体おかしな話なのです。
今回は、経験者が語る労災申請の手順と、会社の証明がない場合の労災申請書の記入方法を紹介します。
会社証明なし⁉自分(自力)で労災申請書を書く方法(記入例)
労災認定まで時間がかかる(半年くらいかかる)かもしれないということで申請自体を諦めている方は多いと思います。しかし、自分自身がケガをしたり、パワハラによるストレスで精神疾患になった場合は、周囲の声に惑わされず迷わず労災申請するのが本来の制度としての筋です。
申請後、労災認定するかどうかは労働局の調査によって決まります。
パワハラによる精神疾患でも労災申請する理由
現時点では、パワハラによる労災認定はかなりハードルの高いものになっているのが現状です。労災認定割合が低いとしても、パワハラによる職場のストレスが原因で精神疾患になったのなら、それは紛れもなく業務上の災害(病気)です。業務上の災害(病気)なら労災申請はできますし、むしろ労災申請することが法律的には正しく真っ当な筋になります。本来あってはならないことですが、精神疾患にかかわらず明らかに労災であるケガや事故の場合でも、会社は労災申請自体を拒否する傾向にあります。ましてや精神疾患という目に見えないものであるなら、なおさら協力しないことでしょう。
パワハラにより精神疾患をわずらった人は、元来真面目な人が多いですから、パワハラ上司の言葉を受けて「ただ自分が怠けている」とか「我慢が足りない」とか思いがちです。そのような心ない言葉を信じ、自分が精神疾患かどうかわからない方もいることでしょう。しかし、もうすでにあなたは精神疾患を発症しています。職場のパワハラが原因で会社に行けなくなった段階で精神疾患をわずらっています。
※ちなみに精神疾患というのは社会病とも呼ばれています。精神疾患であるかどうかの基準は社会生活を営めなくなるかどうか、そのことで日常生活がままならず自分自身が困っている状況、そのような段階で精神科を受診した時点で何らかの精神疾患に該当します。
自分で労災申請をする手順と流れ
それでは、会社の協力がなくても自分一人で労災申請をする手順と流れを紹介します。
1.労災指定病院を受診する
まだ診断をもらっていない方は、まず労災指定病院を受診してください。※労災指定病院でなくても診断自体はOKなのですが、いざ申請書を提出する段階で楽になります。
最寄りの労災指定病院に関しては厚生労働省のサイトから検索してください。
2.会社に労災申請を依頼する
診断書をもらった後は会社に労災申請することを告げてください。会社が労災を認めていない場合でもプロセスとして必要な流れになります。労災申請書を労働基準監督署や病院に提出する段階で、会社証明欄無記入の理由が必要になってきます。できるなら書面(またはメール)といった文章で、会社が証明しない理由をもらっておいてください。
しかし、ただ「勝手にしろ」という会社がほとんどでしょうから「会社の証明欄への記入を求めたが拒否された」という事実を、あなた自身が文面に書いて申請書提出の際添付すればOKです。
3.会社所在地の労働基準監督署へ行く
次に、自分の勤めている会社所在地を管轄する労働基準監督署へ行きます。
注意点としては、自分の住所ではなく会社の住所を管轄する労働基準監督署に行くことです。
厚生労働省HPの労働基準監督署一覧を参考にしてください。
※他に簡単な調べ方として、自分の会社を管轄する労働基準監督署が分からない場合は、Googleの検索窓に【労働基準監督署 管轄 (会社所在地の)県名】を入力して調べてみてください。各都道府県の労働局のホームページが出てきて、県内の詳細な住所区分が書かれています。
4.労働基準監督署で労災申請書をもらう
次に、管轄の労働基準監督署で労災申請書をもらいます。この時ハッキリキッパリ労災申請することを宣言してください。生活保護申請と同じですが申請は誰でもできるのですが、基本的に役所というのは無駄な業務を減らそうとしてきます。ですから優柔不断なまま労働基準監督署へ行ったなら、大体こう言われて相談だけして、ただ帰ることになりかねません。
「認定は半年くらいかかりますよ」
「パワハラの認定は難しいですよ」
「傷病手当金ならすぐに貰えますよ」
大事なことは、ただ相談に来たのではなく労災申請する為に申請書をもらいに来たことをはっきり伝えることです。その後、担当官の求めに応じて具体的なパワハラ内容を相談しつつ、申請書の書き方を教わる流れです。最後に、労災申請書とパンフレットを3点もらって帰ってください。

会社の証明がない時でも自分で労災申請書を書く方法
労災申請する場合、必要な申請書は様式5号と様式8号になります。
次に、会社の証明がない場合の労災申請書の記入方法を紹介します。
労災申請書様式5号(病院、処方薬局用)記入例(記入箇所)
まず、様式5号(療養補償給付たる療養の給付請求書・業務災害用)から説明します。
様式5号は病院と薬局に、それぞれ1枚ずつ提出しますから、計2枚、必要になります。

様式5号の記入箇所は表だけです。※ただ派遣の方は派遣元の証明が裏面に必要になります。
記入箇所としては、会社の証明欄以外、全てになります。

上記赤枠の会社の記入箇所以外、病院(薬局)名や住所なども全て自分で書いて、病院と薬局に提出してください。病院と薬局に提出時、会社の記入箇所が空欄の理由を文書(メモ紙でも何でも良いですが口頭だけでなく文章)にして渡しておきます。難しく考えることはありません。例えば「会社に記入してくれるよう頼みましたが労災ではないと言われ記入してもらえませんでした」という、そのままの事実を書いておけば大丈夫です。
労災申請書様式5号(病院、処方薬局用)の流れ
様式5号の流れとしては以下のようになります。
1.会社の証明欄以外すべて自分で記入する。
2.病院と薬局にそれぞれ1枚ずつ提出する。
3.病院と薬局が労働基準監督署に提出。
以上のように、労災申請書様式5号に関しては病院と薬局に提出して終わりです。
様式5号は労災申請する時だけ、初回の1回だけ書くことになります。
労災申請書様式8号の記入例(記入箇所)
次に、労災申請書様式8号(休業補償給付支給請求書)の記入箇所について説明します。
様式8号には、別紙1として平均賃金算定内訳があります。こちらは過去3か月分の給与を記入し、1日当たりの平均賃金を割り出すものになります。

別紙(平均賃金算定内訳)に関しては意外と会社が書いてくれたりしますが、もし頼んでも書いてくれない場合は、給与明細を見ながら自分で記入していってください。
様式8号(休業補償給付支給請求書)は、労災申請書のなかで一番大事な書類です。様式8号は、表と裏に記入箇所があります。
まず、表から説明します。こちらが様式8号の表面になります。

自分で記入する箇所は、赤枠と緑枠以外です。※赤枠は、会社記入欄になります。緑枠は、病院記入欄になります。

次は、様式8号の裏面です。


×印の箇所は記入しなくて良いところになります。※パワハラを受けて精神疾患になった場合、負傷または発病の時刻は明確にわかりにくく記載に迷うところですが、自分がこの時だと思う時刻を記入してください。
労災申請書様式8号の流れ
次に、様式8号(休業補償給付支給請求書)に記入後の流れを紹介します。
記入箇所のところで述べたように病院の証明が必要になります。病院にもよりますが、すぐにその場で書いてもらえるものではありません。最低1週間~2週間くらい時間がかかることもありますから、時間の余裕をもって提出してください。
病院からの証明をもらったあと労働基準監督署へ提出します。
流れとしては下記のようになります。
1.会社の証明欄と病院の証明欄以外、自分で様式8号に記入。
2.病院に持っていき、病院の証明欄に記入を依頼。※1週間~2週間かかる場合がある。
3.病院の証明欄に記入してもらった後、労働基準監督署へ持っていく。
以上になります。
まとめ
今回は、会社の証明がない場合の労災申請書の書き方を紹介しました。
あとは管轄の労働基準監督署へ提出すれば申請は終わりです。
まとめますと。
・会社所在地の労働基準監督署で労災申請書をもらう。
・様式5号は、全て自分で記入した後、病院と薬局へ1枚ずつ提出。
・様式8号は、会社の証明欄と病院の証明欄以外すべて自分で書いた後、病院への証明欄に記入してもらい、労働基準監督署へ提出。※申請時に持っていく書類は、様式8号(休業補償給付支給請求書)と様式8号別紙1(平均賃金算定内訳)のみ。
書類に不備がなければ、その場で受理されます。その後(労災申請書の受付から)約2週間後くらいで、労働基準監督署から郵送物が届きますから、申立書と調査同意書に記入し返送します。このとき詳細にパワハラの実態を記した日記なども関連書類として同封します。
ここまで終われば、いよいよ、労働局が労災認定調査に動くという流れになります。